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赤薔薇

 投稿者:玄湶  投稿日:2014年 7月29日(火)20時15分28秒
編集済
 
見渡す限り真紅の薔薇。
広過ぎる薔薇園の中心に、まだ幼い少女は居た。


徐ろに手を伸ばし、その一輪をもぎ取ろうとして、小さく身を怯ませる。

見ると、指先からは赤い滴が滴り落ちていた。


「アリス」

その声にはっとして振り返ると、其処には見上げる程の青年が立っている。
青年は笑顔を浮かべながら、「見せてごらん」と少女に手を差し出した。

少女は顔を顰めて傷付いた方の手を差し出しながら、「ローズ」と低い声で呟く。


「アリスの方が合ってる。君はとても可愛らしいからね。ローズは、今の君には少し大人っぽいよ。」

指先に包帯を巻き付けながら青年は笑う。

少女は包帯の巻かれた指先と、その笑顔を交互に睨み付けて、再び盛大に顔を顰めた。



彼女はこの青年が嫌いであった。


ローズという名前がありながら、その存在を無視して「アリス」と掠りもしない愛称をつけたのが彼だ。

赤薔薇と書いて、アリス。

呼ばれる度に訂正するものの、青年は一向に改善しようとしない。
加えて生誕十年が経過したというのに、彼は少女を過剰に子供扱いした。


気に食わない。 青年へ抱く一番の感情はそれだった。



「あんまり遠くへ行くんじゃないよ。
 君の父様は君のためにとあんまり張り切って、迷路のような薔薇園を作ってしまったからね。」


その言葉を背に受けながら、少女は一人で薔薇園の奥深くまで進んでいった。

追い付かれるのを拒んでわざと角を多く曲がり、複雑な経路を進んでいく。


何処までも果てしなく続く薔薇の道。
薔薇は全て少女の髪色と同じ深紅で、一輪として違う色が無いのもそういう理由だ。

此処は彼女のための庭だった。


だからこうして青年が勝手に入って来る事も、彼女が機嫌を損ねる要因の一つだ。


――ずんずんと後先考えず、苛立ちに任せて歩みを進めていく。

ふと辺りを見渡せば、四方八方全てが薔薇に埋め尽くされていた。
またかと思うのと同時に、溜息が漏れる。

また、迷ってしまった―――。


こんな時、どうするのが最善策か彼女は知っていた。
下手に動かず、ひたすら青年を待つこと、だ。

自分一人でどうにかしようとあちらこちらを動き回り、真夜中まで抜け出すことが出来なかったのは苦い思い出である。


仕方なく、少女はその場に立ち尽くした。
青年が自分を見つけ出すまでの暇潰しに、足元に落ちていた小枝を拾い上げて、がりがりと絵を描いてみる。

父様、母様、じい、リズ、……
四人描き上げたところで、聞き慣れた声が掛けられた。

「やぁ、いい子だったねアリス。ちゃんと動き回らずに待っていて。」


顔を上げると案の定、笑顔を浮かべた青年が立っていた。
お決まりのように顔を顰めつつ立ち上がろうとすると、「おや」と彼が気付いた。

「アリスは絵が上手いなぁ。こんなところに描かず、ちゃんと紙に描いて父様たちにプレゼントするといい。」

にこやかな表情の彼とは裏腹に、少女には苛々が募っていく。
遂に耐え兼ねて立ち上がり、再びずんずんと歩き出そうとしたところ、またしても「アリス」と声を掛けられた。

今度は何だ、早く此処を出―――


――振り向きざまに、青年の大きな手が迫る。
思わず身を竦ませていると、頭部に違和感を覚えた。

「うん、やっぱりアリスに似合う。」

状況が飲み込めないままに恐る恐る手を伸ばすと、柔らかな感触と、僅かに尖ったざらざらとした感触が指先に伝わった。

いつも見て触れているから判る、薔薇の花と葉の感触だった。


「…………………何で葉っぱも。」

怪訝な顔で見上げると、青年は変わらず笑顔のままに言った。

「一種のお守り、かな?」

何それ、 くるりと背を向けて、既に少女は歩き出していた。
青年も言葉で道案内をしながらそれに続く。
迷路を抜ければ、母様が窓辺でお茶を飲んでいるのが見えるはずだ。

沈みかけた夕日に照らされて、少女の髪の毛は燃えるような緋色へと変わる。
また明日も、彼女は薔薇園へ足を踏み入れるだろう。
明後日も、明々後日も。
まだ遠い未来に蓋をして。




君が行く路は辛く寂しいものだろう。
それでもどうか、笑っていて。

  ――――――貴女の幸福を祈っている。



 
 

悲願姫

 投稿者:黒紅  投稿日:2014年 3月23日(日)19時00分55秒
編集済
 
人里離れた山の奥、異端の気紛れで産み落とされた妖が一匹

その妖、世にも稀有な人の女型を成していたが故
異郷の地へ赴く際に通りかかった城の一行に拾われる

玉のような赤ん坊であった彼女は大変愛でられ
蝶よ花よと何不自由なく育てられた


人見知りもしなく、活発で利口な姫君は
口に引いた紅が白皙によく似合うその様から
「紅」との名を授かった

そして彼女は紅姫となる



城での日々は愉しく、正しく時間を忘れるようであった
彼女は実の親のように城主を慕い、城の者達と家族のようになる


それから何年、何十年、年月は流れ



紅の姿は若い女のままに変わらなかった


城の者達が皆老いて、時には死んでいく中で
彼女の時ばかりが止まっていた


誰一人として気付かない筈がなかった


初めは風の噂程度が徐々に確信へと変わる
城の者は皆恐れ慄き、そして紅に刃を向けた

積み重ねた信頼も思い出も何もかも、既に其処には無く


兵の一人が彼女を刺した
妖とて変わらない痛みに血涙を絞る

「 何故 」


問い掛けに応えるものは居らず

気付けば手には刃、そして辺りは血の海と化して




全てを失った姫君は崩れた城を去る

持て余す長寿、失ったものを埋めるかのように刃ばかりを振るい続けた


積まれた屍に憂う紅色の華となりて


馳せる名は彼岸花

叶うことのない悲願を抱き

振り払うことすら敵わない罪苦に苛まれながら



軈て命尽きるその時まで





 

灰の音の双子

 投稿者:Ez  投稿日:2014年 1月 9日(木)23時12分50秒
編集済
 
女の名はナトゥーアといった。

彼女の夫は戦争に兵士として駆り出され、長いこと帰ってこなかった。


凡そ五年に渡る戦の結果は、悲惨の一言。
兵士のほぼ全員が命を落とす死闘だった。


ナトゥーアはせめて夫の骨を持ち帰ろうと、人目を避けて焼け野原へと向かった。



骨と灰に溢れた其処はまさに地獄。

どれが夫の骨なのかも区別がつかない中、彼女は一人広大な焼け野原を彷徨った。
そして見付けたのだ、二つの異端を。



「……赤ん坊…?……」

其処にいたのは、黒と銀の髪を持つ二人の赤ん坊だった。
双子だろうか。灰を被って汚れた赤ん坊が、其処にいた。

見れば異端だと判る。その瞳は片方が緋に、もう片方が紫紺に染まっていたから。


「―――――、」


これは自分に課せられた使命なのだと彼女は悟った。
二人の赤ん坊を抱えて、帰路を辿る。



〝流れ行く魂を継ぐ者と、空っぽの夢の欠片〟

名に課せるは贖罪と義務。
無念に焼かれた彼らの意思を永久に引き継いで。


「今日から貴女たちは私の娘よ」



「ナト、お話聞かせて!」
「さっきも読んでもらったじゃん、ナトが大変だよ。」

「いいのよ。――それじゃあ今日は、昔々の大戦争のことを話しましょう。」



永久に継がれるその歴史
二つの異端に託されて


 

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